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開業したら、まず
出すべき届出

届出には、出し忘れても影響が小さいものと、1日過ぎただけで権利を失うものがあります。
後者から先に押さえてください。

開業届青色申告会社設立インボイス
公開 2026.07.31 / 執筆 小西 隆太(税理士)

開業・設立の直後は、本業の立ち上げに追われて事務手続きが後回しになりがちです。ところが税務の届出には提出期限を1日でも過ぎると、その年は権利が使えなくなるものがあります。取り返しがつかない性質のものなので、最初に整理しておきましょう。

まず押さえるべきは「期限のある届出」

届出書には、出しても出さなくても大きな差がないものと、期限内に出さないと数十万円単位で損をするものがあります。後者は実質的に2つだけです。

  • 青色申告承認申請書——期限を過ぎると、その年は白色申告。65万円控除も赤字の繰越も使えません
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書——出さないと源泉所得税を毎月納付する必要があり、事務負担が大きく増えます

逆に、開業届そのものは期限を過ぎても罰則はありません。ただし青色申告承認申請書とセットで提出するのが通常です。

個人事業を始めた場合の提出書類

書類提出先期限
個人事業の開業・廃業等届出書税務署事業開始日から1か月以内
所得税の青色申告承認申請書税務署事業開始日から2か月以内
(1/1〜1/15開業は3/15まで)
青色事業専従者給与に関する届出書税務署専従者給与を出す場合。青色申告と同じ期限
給与支払事務所等の開設届出書税務署従業員を雇う場合。開設から1か月以内
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書税務署随時(提出月の翌月支払分から適用)
事業開始等申告書都道府県税事務所自治体により異なる(多くは開始から15日〜1か月)

従業員を雇うなら、労働保険・社会保険も

人を雇った場合は、税務署以外にも手続きが発生します。労働保険(労災・雇用保険)は労働基準監督署とハローワーク、社会保険は年金事務所です。労災保険はアルバイト1人でも加入義務がある点に注意してください。

会社を設立した場合の提出書類

書類提出先期限
法人設立届出書税務署設立の日から2か月以内
法人設立届出書(地方税)都道府県・市町村自治体により異なる
青色申告の承認申請書税務署設立の日以後3か月を経過した日と、最初の事業年度終了の日とのうちいずれか早い日の前日まで
給与支払事務所等の開設届出書税務署開設から1か月以内
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書税務署随時
健康保険・厚生年金保険 新規適用届年金事務所設立から5日以内
Caution

法人の青色申告承認申請の期限は「設立から3か月」ではありません。決算期を短く設定した場合、最初の事業年度終了の日の前日が期限になることがあります。設立直後に決算を迎える設計にした会社は特にご注意ください。

なお、役員1人だけの会社であっても、報酬を支払うなら社会保険(健康保険・厚生年金)への加入は必須です。「まだ小さいから入らない」という選択肢はありません。

青色申告承認申請書だけは絶対に落とさない

青色申告が使えるかどうかで、初年度の税額はまったく変わります。個人事業の場合、主な特典は次のとおりです。

  • 青色申告特別控除——複式簿記+電子申告(またはe-Taxによる帳簿保存)で最大65万円。所得からそのまま引けます
  • 純損失の繰越控除——赤字を翌年以降3年間、黒字と相殺できます。初期投資の大きい事業では重要です
  • 青色事業専従者給与——家族への給与を必要経費にできます(届出と実態が必要)
  • 少額減価償却資産の特例——30万円未満の資産を一括で経費計上できます(年間300万円まで)

法人の場合も、欠損金の10年繰越や各種の税額控除が青色申告を前提としており、実務上は必須です。

65万円控除を取るには複式簿記による記帳が要件です。単式(簡易)簿記では10万円控除にとどまります。会計ソフトを使えば複式簿記は自動的に満たされますが、初期設定を誤ると帳簿として成立しないことがあるため、最初の設計はきちんと行ってください。

消費税とインボイスの判断

新規開業の個人事業者・新設法人は、原則として開業(設立)から2年間は消費税の納税義務が免除されます(法人は資本金1,000万円未満であること、特定期間の課税売上高・給与支払額による判定に該当しないこと等が条件)。

問題は、インボイス(適格請求書)の登録をするかどうかです。登録すれば、この免税期間中であっても消費税の納税義務が生じます。

取引先の中心考え方
法人・課税事業者登録しないと取引先が仕入税額控除を取れず、取引条件の見直しを求められる可能性。登録する方向で検討
一般消費者相手はインボイスを必要としない。免税のままのほうが有利な場合が多い
免税事業者同上。相手が控除を必要としない
2026年時点の注意

免税事業者からインボイス登録した事業者の納税額を売上税額の2割に抑える「2割特例」は、2026年9月30日を含む課税期間で終了します。個人事業者については2027年・2028年に含まれる課税期間を対象とした経過措置が設けられていますが、法人には同様の措置がありません。これから登録する方は、負担軽減措置がいつまで使えるかを前提に判断してください。

また、簡易課税制度を選ぶ場合の「消費税簡易課税制度選択届出書」は、適用を受けたい課税期間が始まる前までが原則の提出期限です(新規開業年など例外あり)。後から遡れないため、開業時に見通しを立てておくべき項目です。

開業日までにやっておくとよいこと

  • 事業用の銀行口座を分ける——プライベートと混ざると、記帳の手間が数倍になります。開業前に用意してください
  • 事業用のクレジットカードを作る——法人の場合、設立直後は審査が通りにくいことがあります。早めに動くこと
  • 会計ソフトを決めて初期設定を済ませる——口座・カードの連携を最初から入れておけば、あとで数か月分をまとめて入力する事態を避けられます
  • 開業前の支出の領収書を残す——開業日より前の支出でも、開業準備のためのものは開業費として経費にできます。捨てないでください
  • 決算期を決める(法人)——繁忙期を決算月にしない、消費税の免税期間を長く取る、といった観点で選びます

手続きそのものは、一つひとつを見ればそれほど難しいものではありません。ただし期限が短く、後から取り返せないものが混ざっているという点が厄介です。開業前に一度、提出物と期限の一覧を作っておくことをおすすめします。

本記事は2026年07月31日時点の法令・制度にもとづく一般的な情報であり、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。制度は改正されることがあり、また実際の取扱いは個々のご事情によって異なります。ご判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。
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